卒業生インタビュー(2回目)-油画
小林孝亘さん 1986年 油画専攻卒業
「濃厚な人間関係が築けた大学時代は、青春そのものだった」
長い浪人生活を経て、愛知県立芸術大学に進学した、画家の小林孝亘(こばやし・たかのぶ)さん。愛知芸大では、授業のクラスだけでなく、部活動やアルバイトに没頭したことで、友達と親密になれたと言います。今回は、小林さんの大学生時代の思い出を伺います。
・・・・大学生時代にしておいてよかったことはありますか。
小林「クラブ活動ですね。僕が入っていたのはラグビー部で、よかったなと思います」
・・・・スポーツはずっとなさっていたのですか。
小林「高校時代はアメリカンフットボール、大学に入ってからはラグビーをしていました」
・・・・どちらも大人数で戦う競技ですよね。
小林「サッカーだと手がつかえませんが、ラグビーはなんでもつかえる球技です。ボールにつかまったり、横からもぎとりに来る、味方にさえもボールを渡してはいけない。そんなチームプレーは、自分を主張することが強い人がいればいるほど、チームも強くなるんです。それは『絶対こうだ』と思える、今の自分にもつながっています」
・・・・人間関係はどうでしょう。
小林「みんなアツい(笑)!情熱的でした。学科や学年を超えて、お酒を飲みながら話をする、ということをしょっちゅうしていましたよ」
《House Dog》
1995年 oil on cotton on panel 270cm × 270cm 国立国際美術館蔵
・・・・友人たちと考えたり、悩んだり、それを共有したりできる環境はすばらしいですね。
小林「クラスの仲間とも、付き合いが濃厚でした。今は違うと思いますが、当時の油画専攻というのは卒業制作で『絵』を出さなくてはいけません。インスタレーションとかではなくて『絵』だったんです。だからみんな絵を描いていたし、絵に集中できたことが良かったです。今でも一途に絵を描いている人が多いですね」
・・・・貴重な4年間を過ごしたのですね。
小林「他の表現であっても、絵でどうしたらいいかを考えることができる環境でした。それが僕には自然の流れとして受け止めることができました。今みたいにパソコンで映像編集したり、インターネットで簡単に調べたり、という時代ではなかったからかもしれません」
・・・・アルバイトは何をされていたのですか?
小林「先輩から受け継がれている仕事で、体育館の床貼りのような建築関係をしていました」
・・・・その経験は、いまの仕事にも役立っていますか。
小林「生真面目にするのではなく、足りないものがあったら、そこにあるものでなんとかする、ということが身に付きました」
・・・・まさに「青春」ですね。
小林「普通は高校時代を青春と呼ぶと思いますが、僕は大学4年間も青春でした。しかも年齢的には4浪していますが、あんなに楽しいことはない、と今では思えます」
・・・・小林さんの大学時代を聞いていると、うらやましく感じます。
小林「仲間たちとお酒を飲んで、いろんな話をする、ということが多かったですが、今の自分の状況では到底できないことばかり。美術も、ラグビーも、一瞬一瞬を大事に過ごしたことで、本当に楽しい学生生活でした」
インタビュアー・藤田千彩(アートライター)
取材日 平成24年7月30日
インタビュー最終回(3回目)は、11月1日(木)公開予定です。