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H26~フランス=ソルボンヌ大学からの留学報告Vol.3

34881b8882798e6c95711d6bcfcd403c_M.jpg音楽研究科博士後期課程 音楽学領域2年 七條 めぐみさん

現在私は愛知県立芸術大学とパリ=ソルボンヌ大学による「コチュテル(博士論文共同指導)」のもとで研究を行っており、2013年9月からソルボンヌ大学の博士課程に在籍しています。11月は中旬にフランス語の試験があったので、前半はその試験勉強に追われていましたが、後半は研究に時間を使うことができました。今回は、先日授業の一環で行われた「フランソワ・ラング図書館」訪問の様子と、3か月フランスで暮らして感じたことをご報告したいと思います。

1.フランソワ・ラング図書館訪問
11月29日金曜日、パリから北に30キロほどの所にある「ロワイヨモン修道院Abbaye de Royaumont」を訪れ、その中にある「フランソワ・ラング音楽図書館Bibliothèque musicale François-Lang」のコレクションを見てきました。これは、私の論文指導教授であるラファエル・ルグラン先生の「ラモーを読む」というゼミの一環として行われたイベントです。2014年がラモーの没後250年であることを記念して、さまざまなコンサートやシンポジウムが行われますが、ルグラン先生のゼミではコンセルヴァトワール(音楽院)の学生とコラボレーションしてラモーの劇作品の上演を企画しています。この企画を修道院主催の「ロワイヨモン財団Fondation Royaumont」が支援していることから、今回の訪問が実現したようでした。当日は、ルグラン先生のゼミ生とコンセルヴァトワールの古楽専攻の学生が合計20人ほど参加していました。
この「ロワイヨモン修道院」について簡単に説明すると、もとは13世紀に造られたシトー派の修道院でしたが、フランス革命によって紡績場となり、その後19世紀に再び修道院となり、20世紀はじめにその建物や財産を買い取ったグアン家が「ロワイヨモン財団」を設立しました。一方その中にある音楽図書館(写真)は、20世紀前半を生きたピアニスト、フランソワ・ラング(1908-1944)のコレクションに基づいていて、16世紀から20世紀の作曲家の印刷譜や手稿譜、音楽理論書や作曲家自筆の手紙を数多く所蔵しています。例えばドビュッシーの歌曲の自筆譜や、ベルリオーズがメンデルスゾーンに宛てた手紙など、興味深い史料を見ることができます。またこの図書館にはパトリック・フロランタン氏Patrick Florentinが収集したラモー・コレクションの一部も所蔵されています。フロランタン氏はピアニストであると同時に非常に熱狂的なラモーのコレクターで、当時の著作や楽譜だけでなく、ラモーの生涯について書かれた後世の書物や肖像画、ポストカードや録音まで保有しているとのことです。その中から、フランソワ・ラング図書館には主に楽譜と書物が寄贈されました。
訪問の前半は、司書さんから図書館の成り立ちと所蔵資料について説明を受け、館内に展示してある楽譜や書物を見て回りました。中でも興味深かったのはラモーのオペラ《ダルダニュスDardanus》の初版スコアと4パートに編曲し直した楽譜が並べて展示され、ラモーがオーケストラをどのように「縮小」したのかを詳細に見ることができました。
後半は数人のグループに分かれ、それぞれのテーマに沿った史料を実際に見ていきました。私はコンセルヴァトワールでリコーダーを専攻している二人の女の子に交じって、18世紀前半に書かれたバロック・ダンスの理論書を探しました。こうした理論書はとても実用的に書かれていて、譜例やダンスのステップを記した舞踏譜がふんだんに掲載されています。一緒に作業したマチルドとエルミーヌは、当時の人がダンスをどのように理解していたかを知ることで、舞曲の演奏解釈に役立てたいと言っていました。また、私にとっては1750年代の劇作家が一昔前のオペラを批判し、最新のオペラこそが真のフランス音楽であると記述しているのが、ブフォン論争の時代をよく反映していて面白いなと思いました。
このグループワーク、実は一つの史料を選んでその詳細を見ていくものだったのですが、私たち3人はあまりその趣旨を理解せず、興味の赴くままにいろいろな理論書に手を出し読みふけっていました。後から「どうやら違ったみたいだね」と話していましたが、コンセルヴァトワールの学生さんと楽しく作業ができたので上出来かな、と感じています。

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2.3か月が過ぎて
さて、早いものでパリに来て丸3か月が経ちました。今回の滞在は私にとって人生初の一人暮らしでもあり、最初は身の回りのことをすべて自分で管理するのが大変でしたが、徐々にそれにも慣れてきました。そんな中で、とてもフランス的といえる出来事があったのでご紹介します。
現在私が住んでいる学生寮は、家賃とは別に電気代を各自で支払うので、入居して銀行口座を開き次第、フランスの電力会社(EDF)に個人契約することになっています。ですので、私も8月末にはEDFに口座の情報を伝え、無事に契約書が送られてきました。契約書に添付されている「口座自動引き落とし」を銀行に提出すれば、あとは毎月の支払いが始まるものと思っていたら、その後EDFからは何の手紙もメールも来なくなってしまいました。はじめは「契約してすぐには支払いが始まらないのかな?」と思っていましたが、10月になっても何の音沙汰もありませんでした。それでも毎日電気を使っているので、「ひょっとして未払い扱いで電気が断たれるのでは...」と心配になり、寮の管理人さんに相談したところ「それはおかしい」ということになり、さっそくEDFに電話していただきました。EDFのオペレーターによると、契約と口座の登録は確かにしたけれどもその後の手続きが行われていない。理由は分からない、とのことでした。EDFはその場で契約書と請求書を送ることを約束しましたが、しばらくして送られてきたのはまた契約書のみ。その間に季節は冬になり、暖房も使用するようになったので電気代を払っていないのがますます心配になってきました。そして、11月の下旬に再度管理人さんにEDFにかけあっていただいたところ、またしても「何故か分からないが手続きが行われていない」との返答でした。仕方がないので、8月末に契約し10月にも一度連絡していることを訴えたら、今回はEDF側もちゃんと動いてくれそうな様子で、2週間ほどして請求書が送られてきました。これでようやく口座から引き落とされることになり、事態が落ち着きましたが、もしアパートに一人暮らしで同じ問題に直面していたらもっと大変だっただろうなと思います。
今回のことについて、管理人さんによると、仮に半年間支払がないままだったら、EDFが「住人がいない部屋」と見なして電気を切断しに来るとのことでした。もちろん実際には人がいるので勝手に切られることはないそうですが、とにかく問題があったらこちらから反応しない限り放置されてしまいます。フランスではいろいろな局面でそういうことがあります。3か月滞在して学んだのは、何か疑問や問題があったら担当者か事情の分かる人に「直接」聞きに行くことです。フランスの人はそうやって窓口に出向いたり、質問したりする手間を惜しまないように思います。
それからもう一つ、トラブル(電車の運行状況が分からない、インターネットがつながらない、お湯が出ないetc...)があってもあまり慌てず時が経つのを待つのも大切だと分かりました。数時間か半日ほど経つと解決している場合がけっこうあります。フランス人はこの手のトラブルにも慣れているようで、待つのが得意です。スーパーのレジでも、映画館でも、バスの停留所でも、とにかくおしゃべりしながら機嫌よく待っています。日本ではとにかくきめ細やかでスピーディーなサービスが充実しているのでつい受け身になってしまいますが、フランスでそれを期待しても無理な話なので、フットワークを軽く、かつ小さなトラブルは受け流す姿勢でいるのが大事かなぁと感じています。
というように、身の回りのことはだいぶ勝手が分かってきましたが、フランス語のこと、コミュニケーションのことは相変わらず苦戦しています。毎日語学学校に通っていた9月は授業でなかなか発言できないことに悩み、大学の授業が始まった10月は一回の講義での情報量に圧倒されていました。そういうことを少しずつ克服してきた11月は、大学でなかなか友達ができない寂しさを感じていました。あれこれ考えすぎる性格も手伝って、用事がなければ誰かに話しかけることもせず、それが続いていくうちにますます言葉が出てこなくなって話すのが怖くなり...という悪循環、気持ちがかなり暗くなってしまった時期もありました。そんな中でも「メグミ、話さないとダメだよ」と気にかけてくれる友人がいて励まされましたが、やはりフランス人の同世代と話すのが怖いという気持ちが膨れ上がってしまいました。
そうした心境が変わったのが、先日のロワイヨモン修道院訪問だったように思います。行き帰りの電車や図書館でのグループ作業で会話を「しなければいけない」(というのも変な話ですが)状況になって、拙いフランス語でも耳を傾けてくれる子がいることや、互いの専門領域について教え合うことができることに気が付きました。そういうことが何回かあるうちに、コミュニケーションを遮断していたのは、フランス語の能力そのものよりも「話せない自分」に固執していた私の考え方だったのだなぁと思いました。
それからというもの、あまり話せなくても落ち込まないで、とにかくオープンマインドでいよう!と心がけています。最近はソルボンヌの学生や寮の人たちと知り合う機会も増えてきて、少しずつですが友達もでき始めました。それがすごく嬉しいです。

[問い合わせ]

愛知県立芸術大学 学務課 学生支援・国際連携係
Tel:0561-76-2843
Fax:0561-62-0083
Mail:g-shien[at]mail.aichi-fam-u.ac.jp([at]を@に書き換えて送信してください)