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H26~フランス=ソルボンヌ大学からの留学報告Vol.14

e22fd3065e03acc5e6c32e5f30253cfc_M.jpg音楽研究科博士後期課程(音楽学) 七條 めぐみさん

1月11日~17日にかけてオランダのアムステルダム、ユトレヒト、デン・ハーグに行ってきました。今回の目的は、ユトレヒト大学のルドルフ・ラッシュ博士にお会いすることと、ハーグの国立図書館で18世紀の新聞を調査することでした。ラッシュ先生はオランダ音楽史の専門家で、近年はアムステルダムの楽譜出版家エティエンヌ・ロジェについて詳細な研究をなさっています。私は自分の研究を進める中で、先生の著書や論文を読み、ぜひ直接お話を伺いたいと思っていました。そこで、ソルボンヌ大学の准教授でラッシュ先生と親しいテオドラ・プシコユー先生に相談したところ、直接メールしてごらんなさいと背中を押され、面談をお願いするメールを送りました。私にとって「あこがれの研究者」である大先生にアポイントを取るということで、ドキドキしながらメールをしたところ、面談に快く応じていただけました。しかも、研究資料が大学とご自宅の両方にあるため、良かったらお家にいらっしゃいとまで言ってくださり、嬉しいやら緊張するやら...。そんなやり取りを経て、1月に丸一日時間を取っていただけることになりました。
さて、前日からアムステルダム入りして、いよいよ弟子入りの始まりです。朝9時半にユトレヒト中央駅でラッシュ先生と合流して大学に向かい、先生の研究室でお話を伺いました。午前中は私の研究テーマとこれまでに行ってきたことを話して、それについてのコメントをいただきました。私はアムステルダムの楽譜出版をフランス・バロック音楽の伝播と受容という観点から研究していて、オランダについてはまだまだ知らないことだらけです。当然、長年オランダ音楽史に取り組まれてきたラッシュ先生から、出版家の伝記や踏まえるべき文化的背景などに対するご指摘がありました。一方で、アムステルダムの出版譜を「元ネタ」であるパリの楽譜と比較する視点に関心を持ってくださり、出版家が行った編集・編曲がどのように受け止められたのかを注目していくと良いでしょうとのコメントをいただきました。
午後は、今後取り組もうとしているアムステルダム版の受容について、どのようにアプローチしたら良いかをご相談しました。例えば17世紀のフランス音楽を代表するリュリのオペラの受容を扱った研究では、彼のオペラがイギリスやドイツに伝わる上で、アムステルダムの出版譜が重要な役割を果たしたと言われています。しかし、実際にアムステルダム版がオランダ国外で販売されたケースを当たってみると、イタリアの作曲家が圧倒的に多く、フランス音楽はそれほど需要がなかったようにも見えます。このことについてラッシュ先生に伺ったところ、確かにフランス音楽の出版譜がどの程度流通していたのかを示す資料は少ないそうです。ただし、アムステルダムでは17世紀の黄金時代以降、経済力をつけた市民によってフランスの貴族文化が取り入れられるだけでなく、フランスからの移民が社会の一員として迎えられました。こうした広い意味での文化の流入の中に楽譜出版を置き直してみると、アムステルダムにおけるフランス音楽の出版は、主に国内のニーズに応えるために行われていたのではないでしょうか。ラッシュ先生とのやり取りを経て、私はこのように感じました。以前は、フランス音楽の受容にアムステルダム版が広く貢献したと考えていたので、その影響力の範囲を小さく見積もり直さないといけないのは少し残念です。しかし、ドイツやイギリスに今でも残っているフランス音楽の出版譜がどのような経緯でやって来たのかに注目することで、オランダ経由でフランス音楽が伝わった特殊なケースを明らかにすることができるでしょう。
さて、この日は17時半頃までユトレヒト大学でお話をした後、ラッシュ先生のご自宅に伺い、奥様と一緒に夕食をいただきました。その後は、書架を自由に見ていいとのことだったので、フランスではあまり見かけないオランダ音楽史の本や、オークションで購入したという18世紀の楽譜を見せていただきました。今回、ラッシュ先生にお会いしたことで、私が漠然と感じていた「壁」をはっきりとさせ、何が問題だったのかを振り返り、次の目標を立てることができました。また、私は先生の研究手法や視点に強く影響を受けているので、まさに「弟子入り」をしに行く気持ちでいたのですが、先生はむしろ私個人の意見を尊重し、対等な立場で接してくださいました。面談を終えてから、「先生に助けてもらおう」という気持ちが強かったなと気づいて、いつか、同じ分野の研究者としてディスカッションを楽しめるまでに成長しようと思いました。旅の後半は、ハーグの国立図書館にて、1672年から1811年にかけて発行された新聞『アムステルダムズ・クランAmsterdamse Courant』に見られる楽譜の販売広告を調査しました。楽譜の新聞広告については、パリにある別の媒体も含めて、今後じっくり調査していく予定です。(写真は、アムステルダム・プリンゼン運河の昼と夜の様子です。)

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[問い合わせ]

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Tel:0561-76-2843
Fax:0561-62-0083
Mail:g-shien[at]mail.aichi-fam-u.ac.jp([at]を@に書き換えて送信してください)